伊東俊郎のサウンドコラム

伊東 俊郎(いとう としろう)

主な作品、アーティスト(一部サウンドプロデューサーでも参加)
TM NETWORK(デビューから現在まで 「GETWILD」「SELFCONTROL」等)、小室哲哉、米米CLUB(デビューから1st解散まで)(「浪漫飛行」「君がいるだけで」)、山下達郎(アルバム多数)、江原啓之、久石譲(崖の上のポニョ・箱根駅伝テーマ曲等)、ゆず、家入レオ、岡崎体育、木村カエラ、Little Glee Monster 等

 猛暑が和らいだと思ったら超スローな大型台風!コロナは再び流行の兆し。みなさまお元気でしょうか?
 今回は録音時に必要不可欠なマイクの話をします。
プロの録音に使用されるマイクは「高感度・高音質・低雑音etc」そして「高価格』です。とても繊細で取り扱いが難しく、面倒です。
 しかし基本的には一般なマイクと同じです。
 彼らには思考能力が無く聞こえてくる音に全て反応します。「直接音・反射音・音の大小・距離感」「必要な音・不要な音・無駄な音」全てです。
 つまり、自分で選択できないので前回お話した「聞く」ことしか出来ません。
良い録音をするためには、目的音源に対するマイクの環境を「整音・調音」する必要があります。
マイクに対し録音に必要な音だけを「聴かせる」作業が重要です。
 日常私たちは、自分が聴きたい音を優先的に「聴き」生活してます。世の中には「プロ用超高感度マイク」を超える能力をお持ちの方も
 いらしゃいます。全てが高感度に「聞こえる」という事は、大変な情報量だと思います。凄い処理能力が必要です。
「調音・整音」して楽に正しく「聴く」は、マイクに人にとってとても重要な事だと確信します。

 私は音楽録音業界に入って48年、現在もレコーディングエンジニア&サウンドプロデューサーとして活動しています。

 今回は音源制作者側の「聞く」と「聴く」に対する意識の違いをお話します。「聞く」は意識をしなくても耳に入ってくる状態でBGMは「音楽を聞く」です。「聴く」は意識的に耳を傾ける状態で、好きなアーティストの曲は意図的なので「音楽を聴く」です。

 「聞く」から「聴く」に導くために音源制作者は作業をします。「メロディ・歌詞」や「音色・音像・リズム」を時代に合わせ、時代を先取りして企画・制作します。「聴いてもらう」が売上に大きく関わってきます。録音的にはドラムスなどの「リズム楽器の音作り」と「歌などの主旋律の音像・音作り」がポイントになります。ビートの基本となるドラムスはクリアなアタックと豊かな低音を録音するため楽器本体の不要な響きを意図的に制御し(整音)マイクを音源の近くにセットします。「歌」は艶やかな響きと声の個性をハッキリさせるため収録場所の余分な響きをおさえ(調音)必要な音域のみがマイクに入るように制御します。
 ここに原音再生の概念は無く「聴いてもらう」ためのデフォルメと色付けをします。絵画制作と同じです。