理事長ご挨拶
人は日々の生活の中で様々な「音」と共にあります。しかし、あまりに多くの心地よさ(Sound good)やその逆(Sound bad)に慣れてしまい、課題にすら気付かずにいることがあります。私たちは「音環境」を調える/整えることを通して、多くのSound niceに囲まれた人が心豊かな生活を送れる社会づくりに取組みます。
五感は、視覚は瞼、味覚は口を閉じることで情報を防ぐことができますが、聴覚、触覚、嗅覚は絶えず情報を受け入れています。視覚に色合いや輝度調整があるように、味覚にグルメがあるように、嗅覚にアロマテラピがあるように、触覚に肌触りがあるように、聴覚の心地よい(Sound nice)を堪能できるように「音環境」に着目します。
このために私たちは、音量や音質、音の反射による響きや音色などの調整を行うことを調音・整音とし、調査・研究を進め、様々なイベントや講座などを通して「音」についての理解と音環境の調え/整え方を知り、サウンド・ソムリエ検定を通して音の技術を利活用できる人材の育成や、音に関わる社会的な貢献を行います。そしてこれらの活動を通して、人々の真に豊かなQOL(Quality Of Life:生活の質)を実現していきます。
一般社団法人国際調音・整音協会 代表理事
福島学
奥野 信宏氏
経済学博士・名古屋都市センター所長・元名古屋大学副総長・元国土審議会長
名誉会員
私は長い間、新しい国土の均衡ある発展を目指して活動をして参りました。それにはハードの基盤整備と共に人の繋がりの構築が必要であり、「交流連携が新たな価値を生む」は、国土政策の長い歴史を貫く理念です。国土形成計画では、多様な主体は「新たな公」と呼ばれ基本戦略の一つとされました。「新たな公」というのは、厳密な定義にはなっていませんが、「公共心を持って社会で必要とするサービスを提供する活動や活動主体、それらの意義を評価する価値観を指す」と考えています。
一般社団法人国際調音・整音協会が設立され、音環境の調整を介して、誰もが豊かな生活を送れる社会を創ることを目指し活動されることは、公共心を持って社会で必要とさるサービスを提供する活動主体となるのではないでしょうか?協会の活動に期待しています。
栗田 卓也氏
工学博士・三井住友信託銀行顧問・東京大学大学院新領域創成科学研究科特任教授・前国土交通事務次官
名誉会員
国土の開発・保全、交通政策など幅広い分野を所管する、国土交通省の公務員として務めてきました。国土交通省では、防災・減災の緊急対策に続き、2021年度に社会資本整備の5か年の計画的取組みを始めています。また、ユニバーサル社会の実現も含め、SDGsやDXなどに向かっての取組みを積極的に展開しています。
地域社会に目を向けると、人口減少と高齢社会が併進する中、サステイナブルな地域構造を構築するには、公共の志をもって自発的に活動する人びとの連携した取り組みにより、市場経済の機能を行政と共に補完する役割という視点に立って、サードセクターの活動に着目してきました。
今般、ユニバーサル社会、バリアフリー環境の実現などの社会的課題に向き合い、一般社団法人国際調音・整音協会が設立されたことは、誠に時宜を得たものと考えています。地域に根差した具体的の取組みを進められることを期待しています。
吉田 次郎氏
音楽家、国連親善大使 名誉会員
音を生業に生活している我々音楽家にとって美しくかつ正しく記録するのは使命であります。長い年月をかけ録音機器や録音スタジオのあり方について試行錯誤し続けています。
良い音を作り出すために我々アーティストは精進し続けなければなりませんが、音を奏でる環境は様々です。整音と言う環境作りの重要性はその中でも最上位に位置付けされるもので長年の課題として私の宿題です。この度国際調音・整音協会が設立される事は音楽会にとっても素晴らしい一歩になると信じております。
伊東 俊郎氏
レコーディングエンジニア&サウンドプロデューサー 名誉会員
私はレコーディング・エンジニアとして1976年から、音楽制作に携わっています。その間、アナログからデジタルへと大きな変化がありました。
音楽記録媒体はレコード・カセット・CD・ストリーミング等と多様化し、再生機器もデジタル化・小型化し、いつでもどこでも移動しながらでも聞くことが可能になり、ヘッドフォン・イヤフォンが多く使われるようになりました。
音環境の変化は、聴覚に影響を及ぼしている原因の一つと思います。最近「hidden hearing Loss(隠れた難聴)」と言う病名を聞きます。環境音の中で個別の音の聞き分けや、人の声の聞き取る能力が低下する症状で小さい音は聞こえるため、難聴と判断することが難しいそうです。
日常や仕事中に、会話が聞こえにくい事で、コミュニケーションが難しいことがあります。「調音・整音」の概念が浸透し、音環境作りの重要さが認識され、音環境が改善されることを、強く願っています。
柳川 博文氏
私は音響メーカーに就職し20数年間音響の研究開発に携わってきました。その間生活環境の変化か、スピーカは小型化し低音が犠牲となっていくのを目の当たりにしてきました。最近ではテレビが薄型となり、画面が高精細で大型化しましたが、音はそのしわ寄せで低音の抜けたキンキンしたものになってしまいました。どちらもスピーカーキャビネットの容量低下による音質劣化です。その後大学に移り、音楽再生を主とした音響に関する研究を続けてきました。そこでは緊急時のサイン音についても研究し、サイン音がどこから聞こえるかがわかるようにするのが重要であると知りました。現実には、たとえば私の住まいでもピーという警告音がヒーターなのか冷蔵庫なのか炊飯器なのかわからず探し回ることがあります。すなわち音の方向定位が形成困難な音となっているのです。これらのことは現代社会においてコスト優先のためか、音が軽視されている状況を物語っているように思います。このほど設立となった国際調音・整音協会の活動が少しでもより良い音環境作りに寄与できればと思っています。
船場 ひさお氏
2020年3月3日(耳の日)に設立した一般社団法人こどものための音環境デザイン Acoustic Design for Children(ADC)では、“環境と人とでつくる音環境”をコンセプトに、こどもの視点から音環境のあり方を考え、音環境づくりにつなげていく活動に取り組んでいます。中でも2020年6月、日本建築学会環境基準「学校施設の音環境保全規準・設計指針」の改定に際して新たに設定された、保育施設及び配慮が必要な子どものための音環境に関する推奨値と設計指針を、広く正しく、少しでも早く社会に広めるための活動に力を入れています。
設立直後からコロナ禍に見舞われたこともあり、手探りで、できることから少しずつ事業を進めてきましたが、これまでの活動から見えてきた課題もたくさんあります。特に保育関係者、建築関係者、その他様々な立場の方々との交流を通して、保育施設などの音環境を整えることの意義や音響的な知識を、各専門家に意義ある形で伝えていくことの重要性を痛感しています。そんな中、国際調音・整音協会様が掲げる「音環境の調整を介して、誰もが豊かな生活を送れる社会を創る」というテーマに接し、相通じるところを強く感じました。
また私にとって、こどものみならず、視覚や聴覚に障害のある方、高齢者など全ての人々の日常生活の様々な場面、空間の音環境を向上させることはライフワークであり、生涯携わっていきたい活動です。
一般社団法人国際調音・整音協会が設立され、今後いろいろな形で連携・協力しながら活動を進められることを楽しみにしております。
米井 嘉一氏
同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター
教授 米井嘉一
私の専門は抗加齢医学(アンチエイジング)である。日本人は小児から老人に至るまで慢性的な睡眠不足の傾向があり、睡眠不足による不定愁訴は様々な生活習慣病や精神的健康と関連している。よって睡眠の質を高く保つことは、抗加齢医学の観点から非常に重要である。 睡眠の質を高く保つためには睡眠のための快適な環境が重要となるが、睡眠を妨げる因子の一つに騒音が挙げられる。不快な騒音は睡眠の質を低下させるが、全く無音・遮音の環境では、かえって心臓の鼓動が気になって入眠に支障をきたす。調音という概念は不快な音を吸収し、快適な音を残すということから、脳に対する不快な音ストレスが軽減し、睡眠環境の改善に役立つものと考えられる。国際調音・整音協会が設立され、本分野における科学的エビデンスの開発・蓄積とその広報および社会実装化が大きく推進するものと期待している。
宮川 直輝氏
有限会社幸昭 専務
F・FACTORY株式会社 代表取締役
私は約20年防音・音響の専門家として、日々「音」と向き合ってきました。その中で痛烈に感じるキーワードがあります。「音」=「パーソナル」です。
コロナ渦において在宅ワークが広がり、「音」に対しての人々の認識が大きく変わりました。それまでの気にならなかった音が在宅ワークになることで気になる音になるケースが増え、個々の空間の必要性が高まり、個々に合った快適性が求められるようになりました。皆で同じ職場で働き、同じ空間を共有し、他人に合わせる時代は終わろうとしています。
今後益々需要が拡大するであろうパーソナライズされた世界において、その人に合った「音空間」はマストとなります。国際調音・整音協会が設立されることで、新たな需要の救世主となることを期待すると共に、私自身も20年培ってきたノウハウを本協会のお役立て出来ればと思います。